犬山の読書録

犬山です。心動かされたものについて記録します。

【感想】これからの日本のジビエ

www.midorishobo.co.jp

動物大好き! お肉大好き!なので時々読みたくなるジビエ(食材として捕獲した野生鳥獣)本。
「はじめに」曰く、世にジビエを食べる本とか狩猟のハウツーはあれど、動物の生態や食中毒の危険性などにも踏み込み、学術的に示したものはほとんどなかったので作られた本だそうな。その志の通り、データや現状、希望はもちろん、リスク因子についても丁寧に触れられている。

以下、印象に残った部分。

 

◆狩猟文化とマタギ(P26)
殺生禁止の仏教と折り合いが良いとはいえない狩猟者。その中でもマタギは他の猟師には類をみない独特な宗教感や生命倫理を尊んだ。
狩猟と関わりの深い長野県にある諏訪大社では古くから「鹿食免」「鹿食箸」を授けていた。


https://suwataisha-jyuyo.raku-uru.jp/item-detail/675774
今もある!食の安全祈願くらいにボヤかされているのね。

 

私はペットショップはほとんど注目しないのだけど、鹿肉がペットフードとして活用されてきているそうな。

あとは「肉骨粉にすると体積を減らせるし、抗酸化剤を入れたら常温保存できるようになる。→トラフグやブリの飼料、肥料の原料として効果があることが確認されている。ペットフードなども普及してきた。(要約)」という話もへーと思った。害獣を肉骨粉にするの、気持ちがこもってそう。いやシンプルに活用できていいのかもしれんが。

 

◆シカはなぜ増えたのか P85
・ハンターの減少と高齢化
・農村の過疎化と耕作放棄地の増加→鹿のえさ場になる
(↑ここまではよく聞くやつ)

・木材生産を目指した拡大造林政策
戦後、復興造林として戦中および戦後に荒廃した伐採跡地への造林
→1955-64に拡大造林政策で天然などがスギ、ヒノキ林に転換された。
林を作るにはまず生えてる木を切り、苗木を植える。木が大きく茂るまでの10~15年間は地上植物が繁茂し、シカのえさになる
→シカが増えるという流れがあった。


・狩猟の制限との関係
1901狩猟法でシカの禁猟解除、1918の改正で個体数減少
→1950雄鹿のみが狩猟獣になる、
→それでも個体数減少したので1978には1日1頭だけになる
→1980以降個体数増加

という流れがあったそうな。造林政策の話と合わせると、減りかけていたところで狩猟の制限がかかり、いい餌場が増えた→何年かたつとスギヒノキ林になり暮らしにくかったので人類の生活圏に移動、邪魔になり始めるという流れか。エゾシカ&北海道はまた事情が違うみたいだけど。

 

 

ジビエの安心・安全
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00021.html
ガイドラインが作成されている。

シカの生食ではE型肝炎ウイルス食中毒事例が報告されている。生焼けは絶対ダメで、中心部75度以上、1分間加熱必須。あるいは63℃30分以上。(p149に低温調理レシピあり)
また、熊肉でトリヒラ症という寄生虫による食中毒報告がしばしばある。日本でトリヒラ症はほぼクマのみらしい。
https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/trichinella.html

 

ジビエを生でいく気がしれないが、野性味を感じたくて生でいってしまいたくなるのだろうか…自然だから体によさそうな感じ?

寄生虫は食後数日あけてからとかで発症するらしいし意味わからなくて怖いね…

 

「鹿肉は高たんぱく低カロリー、鉄分が多いのでアスリートにもおすすめ。あとは美容目的の女性、タンパク質を取った方がいい老人など。(P195)」みたいな話があったけど、健康にいいことをうたうなら、まず安心して食べられる加工、流通の仕組みづくりがかかせないのではないか。食中毒出てたら健康収支マイナスだし。